ジャニーズときどき趣味のおはなし

ど新規ジャニオタのゆるゆる日記です

舞台「盗聴」で見た自担の闇

そういえば濵田くんの主演舞台、「盗聴」を東京公演見に行ったんですが、あの舞台ネタバレ禁止だったせいでブログ書けなくてずっとそのままになっていました。

もう終わってだいぶ経ちますので感想を書いていきたいと思います。

盗聴

 

濵田くん演じる榎木田歩は盗聴撲滅隊という名前の会社を経営して、盗聴されているんじゃないかという人々の不安に応えて盗聴器の調査をしているんです。まぁ探偵みたいなものなのかなぁ。

盗聴それ自体は罪にならなくて盗聴器をつけるために不法侵入するのが罪になるんだ、とか盗聴豆知識も手に入ります。

いろんな盗聴のケース(浮気を疑った夫が自宅の寝室に盗聴器をつけるとか)そういうのも知れて面白いです。

この榎木田がいいキャラなんです。歌がうまくて、ツッコミどころがあるけどしっかりしてて、でもあたりはソフトで、丁寧で、いつもニコニコしていて、一緒にいて安らげる人。この人はいいなぁって思ってそばにいたくなるような人だった。自殺を考えていた佐野睦美を止めたりとかね。その止め方も優しかった。カッコつけないんですよ。どんな人にも威圧的にならないというか、とにかくあたたかくて素敵な人だった。

で、ある日この会社にストーカーに遭ってる気がする、盗聴器を探してくださいって女の人が来るんです。ところが翌日、約束の時間に彼女の家に来ても出ない。前日は切羽詰まった様子だったから盗聴撲滅隊は不安になり、調査をします。依頼人の彼女はどうやら襲われ、拉致され、ひょっとしたら殺されたかも知れない。でも彼らは親族でも何でもなくて、あくまで盗聴器を探してくれと依頼された外部の人間なんですよね。それでも気になって色々調べていると容疑者風の人は出てくるんですが決定打がない。。。

 

と、まぁこういう話なんですけど、ネタバレしますとね、榎木田は人殺しなんですよ。少なくとも2人は殺してる。うち1人は観客の目の前で殺しました。それも全く恨みも何もない人間を、全く身勝手な理由で殺した。自分の殺人の罪を押し付けるために殺した後に自殺に見えるように現場に細工をして遺書もPCに残した。あまりにも平然とソフトな態度で優しい正義の味方の仮面を落として人殺しに豹変するから怖くて客席の濵田担、ほとんどろくに息ができていなかったと思います。

濵田くんの悪役大好き人間なんですが、濵田くんの悪役の何がいいって、演技過剰じゃないところです。

濵田くんの悪役って、ある日突然隣にいる人がその本性を見せるような、それも剥き出しにするんじゃなくて装うことをやめるような怖さなんです。

看守長の時もそうだった。イキスギさんの再現VTRで、霊を意味なく連れて歩いて家族が反動で殺されている男を演じてた時もそうだった。ニコニコしてて、身内には親切だったりして、人に同情もするし、電車にいても人殺しだって気が付かれない。でもなんか決定的なところで物事の考え方とか判断基準とか、誰かをゴミだと判断するボーダーラインとか、そういうのが普通じゃないんです。大概の人のやる殺人犯役の怖さって、全く主人公やヒロインとは無関係な、場合によってはredrumとかボーンコレクターとか名乗って、予告状出して、黒一色の服を着て奇妙なマスクをかぶってオリジナルの凶器を持って「俺にもっと血をよこせ〜」みたいなわかりやすい怖さが多いと思います。アメリカの伝統的なホラー映画の殺人鬼、みたいな。濵田くんのやる殺人犯の怖さって、普通に何年も付き合ってた彼氏と、ふとした時に学生時代の思い出話してたら、彼氏が「クリスマスにポケモンのゲームをプレゼントにもらった」みたいな話をするトーンで「高校生の時に橋の下で寝ているホームレスの男をバットで殴って殺した」って話し出すような、そういう殺人犯なんですよ。殺したことを何とも思ってないみたいな、心が欠落しているみたいな。それでいてそのことをことさらに言い立てたりしないというか。

 

榎木田が何か普通じゃない、どこか狂ってしまった「優しそうに見える人」であるということのヒントはちょいちょい彼が後半豹変する前から出ていたんです。

まず警察に言わないんですよ。相当事態が変なことになっても絶対警察を呼ばない。私舞台を人と見たんですが、その人も「警察に連絡したがらない男ってやばいんだってことがわかった」って言ってました。警察を避ける奴はやばい。

あとそれぞれなぜ盗聴を憎むようになったかって話を撲滅隊のみんなでしている時に、彼の過去の話をするんですけど、それが無茶苦茶に重いんですよ。母子家庭で、お姉ちゃんが元彼に盗聴した音声を流されて自殺、それで参っちゃったお母さんが車で壁に突っ込んで自殺、榎木田は天涯孤独になったって話なんですけど、あまりにもあんまりじゃないですか。こんなことがあって、どうしてこの人はこんなに優しくて、普通で、ニコニコしながら人に優しく生きていられるのだろうって思うような過去なんです。

 

結局榎木田はですね、自殺して死にます。お母さんと同じ方法で。車で壁に突っ込んで。

ラストシーンが彼の自殺なんですが、「つばさをください」を歌いながらどんどんスピードを上げて突っ込むんです。

「つばさをください」は劇中で撲滅隊のみんなでアカペラで歌った曲で、それまでずっと幸福なイメージの曲だったのに、最後の最後で曲のイメージが変わってしまった。

 

今でも榎木田のこと考えます。あの人の闇について。ああいう、普通に世間にいながら暗い穴の真ん中にいるような人をどうしたらいいのか。

最後の挨拶の時、観客みんな静まり返ってしまって、濵田くんが「あれは役でやっているだけでああいう人ではないです」と絶妙にコミカルな感じで言ってくれなかったらみんなしばらく立ち直れなかったと思う。演技がうまかったし演出もうまかったんだと思うけど、自担が身勝手な人殺しで、その彼が救いのない自殺をしたのを見たら、普通口もきけませんよ。

最後の挨拶が楽しくてほんわかしていたので楽しい気持ちで帰れましたけど、でもあの男、あの壁に突っ込んだ人殺しの男については考えてしまう。

 

ただ世界最高の脚本でどこも改善点がないのかと言われるとそんなことはないと思いました。ごめんなさい、自担の舞台でも思うことは思うので。

まずセックスの最中の音声を舞台て大音量で流すのは脚本家か演出家の性癖満たしたって感じで別に脚本には必要ないと思ったな。睦美ちゃんの彼氏との対決も、正直正体明かす前ずっときちんとしていて正義の側だった榎木田の正義が歪むというか、身内のためなら理屈変えちゃうんだねって感じでダサかったのであのくだりいらなかった。最後の彼氏との対決の下りのオチも男に都合がいい感じで女としてはなんでこんなことで済ますんだよ、普通すまさねぇだろ、と思った。あと無駄な場面転換の無駄に日にち跨ぐシーンが多かった。整理すればもっといい舞台になると思いました。